
カラトラバ….1800年代からジュエリーとして女性が腕時計をつけ、1900年代に入り、タイムピースは男性が腕にはめることで、本当の役割を果たすようになる。1920年代には第一次世界大戦の爪痕の中、アメリカの”怒涛の20年代”と言われるように産業革命により、ビジネスの中で時間に対して重要視されるようになった。それにより時計をより身近に感じることでそのデザイン性はポケットウオッチのラウンドを引き継ぎ、アールヌーボー的な造形が主流となっていたが、20年代、建築様式の革命によりアール・デコスタイルの現実的様式の象徴として角型、トノー型のデザインがタイムピースの時代を支えていった。その後30年代に入ると、アールデコ様式は崩壊、より自然で自由曲線的な芸術考え方であるアールヌーボー的造形も見直されるようになった。
そんな時代の流れが、パテックフィリップという時計という産業の象徴として崇められる確固たる地位を築きあげたタイムピースの歴史に大きな変革をもたらす事実、若しくは非現実的なストーリーであったのかと考え込んでしまう謎となる一品がここに存在したらどうなるだろうか…..
カラトラバ…..Ref.96
1932年、自由曲線てであるアール・ヌーボーのラウンドの造形に、角型を造形理論のひとつとしたアールデコの直線的造形を重ね創造するかのように、曲線で表現したラウンドをそれぞれに角度から見ると全く違う世界に見えるように、ラウンドのベゼルは完全なるフラット、ラウンドから流れるラグまでを曲線をケースサイドのラインを重ねる境界線はより直線的に表現し、ある意味1930年代のモダニズムの象徴として”カラトラバ”は誕生したと言っても過言ではない。。
そんなカラトラバの象徴たる96から 均整整ったゴールドのダイアルに寸分狂いも無く添えられたドットのインデックス、そこに共鳴するかのようにズレの全く無い18金無垢のバーインデックス、そして6時位置の60秒の目盛りを繊細に描き、そこにスモールセコンド針が宙う、この逸品を長きにわたり見続けてきた証として年輪のように”PATEK,PHILIPP & CO”が線先まで繊細に描かれている。耳にあてながら独特の96サウンドを聞く、そこに伝わる18000振動の確かな心の響き、それは直径26.75mm,厚さ4mmという世界が存在し、2番車、3番車を固定するブリッジが大きく湾曲し、なでらかな曲線を描いた美しい”ジュネーブ様式”の伝統を引き継ぎ、究極の美へと導く….18世紀、ジュネーブ学校の教授であったロジェール・ビュゾーが描き創造したこの様式に見入れられたように、1年間の2/3が雪で閉ざされたスイス、ジュネーブで創造され、明方のジュネーブ湖畔の静まり返った湖畔に一滴の雪解けの水滴が葉から零れ落ち水面に広がる波紋を描き写し、それを刻んだ”コートドジュネーブ”がこれほど似合うキャリバーは存在しないと言っても過言ではないであろう。更にそこにはビジョンブラッドのエクストラルビーの色合いを証するルビーまでもオリーベ加工され、そのルビーのトップまでも曲面に磨き込まれた”ミグラス加工”となり、まさに美という世界にとことんまで当時の職人が挑んだ妥協を許さない細かすぎるディテイルへと導いている…….
リューズを回したとたん動き出すガンギ、テンプの協奏曲は、デカメのチラねじへと伝わり、ブレゲひげゼンマイとの美しい共鳴が聞こえ、そこから伸びる先に見うる2.5mmのビーンズブレートのヒゲ持ちすらにも妥協を許さないアングラージュを施し、そしてその鏡面の美しい輝きの先にはバックラッシュを防ぎ精度を的確に微調整するスワンネックという精度を究極に求めた真実の姿がそこに存在する。
すべてにおいて完璧を求めた形… 96 キャリバー12-120 最高の逸品である。




