
By the 1940s, Breitling had reached the pinnacle of aviation watchmaking, introducing the Chronomat in 1942—the world’s first chronograph with a circular slide rule.
Yet at the same time, Breitling explored a far more elegant direction.
The result was the Datora.
Powered by the legendary Valjoux 89, Reference 244.94 combined a triple calendar and moonphase display, reflecting the era’s growing fascination with astronomy and lunar exploration.
Its wedge-shaped markers, floating Breguet numerals, pointer date, and striking red chronograph hand create a design that is both charming and sophisticated.
A true masterpiece from Breitling’s golden age.
1927年、ドイツ宇宙旅行協会(Verein für Raumschiffahrt)が設立され、人類は宇宙への夢を現実の技術として追い始める。そして1942年、ドイツはV2ロケットの試験飛行に成功した。
人類が初めて宇宙空間へ到達可能な技術を現実のものとした瞬間である。
それまで空の彼方に存在した未知の世界は、もはや夢物語ではなくなり、戦後、その技術はアメリカとソ連へ受け継がれ、本格的な宇宙開発競争の幕開けとなっていく。
特に人々を魅了したのは「月」であった。
イギリス惑星協会(British Interplanetary Society)をはじめとする民間研究機関は、月探査ミッションの概念設計や月面活動用宇宙服の研究を真剣に進め、人々は初めて月面到達を現実的な未来として捉え始める。
そのロマンは時計産業にも大きな影響を与えた。
ValjouxやFelsaといったエボーシュメーカーは、曜日、日付、月表示に加え、月齢表示を組み込んだ複雑機構ムーブメントの開発を進めていく。
その代表格がValjoux Cal.89である。
トリプルカレンダーとムーンフェイズをクロノグラフ機構と融合させたこの名機は、後に数々の名作を生み出す礎となった。
そして1950年にはロレックスが伝説的なムーンフェイズモデル Ref.6062 を発表。時計業界は空を越え、月への憧れを腕時計の中で表現する時代へと突入していく。
その頃、ブライトリングは航空時計開発の頂点へと到達していた。
1942年には世界初の回転計算尺付きクロノグラフ「クロノマット」を発表し、航空時計史にその名を刻む。
しかし同時に、ブライトリングは航空時計とは全く異なる方向性の時計を世に送り出している。
それが『DATORA』である。
1940年代から1950年代にかけて、ブライトリングはValjouxやFelsaの高品質エボーシュを採用し、トリプルカレンダーやムーンフェイズを備えた華やかなモデル群を展開していく。
その代表作こそ、Valjoux Cal.89を搭載した Ref.244.94 である。
独特の楔形インデックスと優雅なブレゲ数字のフライングアワーマーカー、ポインターデイト、そして鮮烈な赤色のクロノグラフ秒針。
そのデザインは可憐さと気品を兼ね備え、他のクロノグラフにはない特別な存在感を放っている。
さらにムーブメントに目を向ければ、Valjoux 89特有の2/3ブリッジ構造と大径テンプが姿を現す。
一目見ただけでCal.89と分かるほどの個性を持つその造形は、機械式時計が芸術と技術を高い次元で融合していた時代の象徴と言えるだろう。




